Wii Uは5人で遊ぶと楽しいが、人が集まらない問題

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2013年6月27日に開催された任天堂株主総会の質疑応答の文字起こしがWebサイトに掲載されていたので、読んでいたんですが、ちょっと気になることがありました。


【関連サイト】

2013年6月27日(木) 任天堂 第73期 定時株主総会 質疑応答

上記リンクの3ページ目なんですが、スーパーマリオブラザーズUはオンラインを介して遊ぶ要素が無いけれど、どうしてだろうかというような内容の質問に対する答えです。以下、サイトより一部抜粋して引用。

『New スーパーマリオブラザーズ U』の場合は、テレビの前で5人まで遊ぶことができますが、5人そろって遊ぶことで盛り上がるということに一番チューニングの軸を置きましたので、ネットワークのほうにはあまりエネルギーをかけませんでした。

僕が気になったのは、任天堂のオンラインサービスに対する姿勢云々ではありません。ではなくて、この「5人そろって遊ぶことで盛り上がるということに一番チューニングの軸を置きました。」という部分です。これが実はものすごくWii Uの足を引っ張ってるんじゃないかと思ったのです。Wii Uをあまり遊んだことがない人にも分かるようにちょっとじっくり説明してみましょう。


Wii U GamePadを活かしたゲームが無いという誤解が起こる理由

Wii Uに対する批判としてよくあるのが「Wii U GamePadを活かしたゲームが無い」という意見。僕はこの意見は、Wii Uに対する客観的な評価としては、あまり正しくないと思っています。ただ一方で、ユーザーの不満としてこれが挙がるというのは、よく分かります。

 

というのは、Wii U GamePadを活かしたゲームが出てはいますが、何がどう面白いのかは実際にゲームを遊ばないと分かりにくい上に、そのポテンシャルが十分に発揮される環境で遊べている人はあまり多くない、という状況があるからです。

 

おそらく「Wii U GamePadを活かしたゲームが無い」と感じている人は、実際にWii Uで遊んでいないか、もしくは、5人で遊んだことがない人がわりと多いんじゃないかと思います。Wii Uは5人で遊ぶと爆発的に面白くなります。上記のNew スーパーマリオブラザーズUもそういった側面がありますが、より顕著なのはニンテンドーランドや、ゲーム&ワリオです。

ニンテンドーランドにマリオチェイスというゲームがあります。おいかけっこをするだけのゲームなんですが、1人がWii U GamePadを持って、マリオを操作して鬼になります。残り4人はWiiリモコンでキノピオ操作して、4分割のテレビ画面を見ながらマリオを追いかけます。Wii U GamePadにだけ全体マップと各プレイヤーの位置が表示されますから、マリオはそれを見てキノピオ達のいない方いない方に逃げていきます。

キノピオ達は自分の周りしか見えませんから、みんなでテレビを見ながら、「マリオが黄色のゾーンから中央方面に逃走!」とか叫んだり、「俺はこっちから回りこむから逆から行って!」なんていう形で声をかけあって連携を取ります。

 

みんなで連携してマリオを追い詰めた時も、逆にマリオがうまーく撹乱して逃げた時も、すごく盛り上がります。ゲームが終わると、全体マップに各キャラクターの動いた軌跡が表示されるんですが、それを見ながら「あそこ、もうちょいだったのにー!」なんて振り返るのがまた楽しかったりします。

 

これはやっぱり、キノピオ4人対マリオ1人のアンバランスな対決が面白いわけです。Wii U GamePadの情報を武器に1人で逃げるマリオと、情報の少なさを連携でカバーするキノピオ達。まさに、5人で遊んだ時に最も面白くなるようにチューニングされたゲームです。4人ぐらいでも面白いですけど、3人だとかなりイマイチな感じになります。

 

ニンテンドーランドやゲーム&ワリオには、こういう4~5人で遊ぶとすごく面白いというゲームが結構ありまして、そういうゲームこそ、Wii Uの特性が存分に発揮されているという傾向があります。

 


みんなで大きな画面を見て遊ぶ

1人だけマップが見えていて、他の人は自分のキャラの周りしか分からないって、構造的にはニンテンドー3DS(以下3DS)でもできそうじゃないですか。でも、3DSのマルチプレイと決定的に違うのは、みんなが1つの大きなテレビ画面を見てるということですよ。一緒に遊んでるんだけど、みんな下むいて自分の画面見てるのと、1つの大きな画面を見てるのとでは、パーティーゲームの盛り上がり方は全然違います。

これは余談になりますが、もうちょっと言うと、5人よりもっとたくさん人がいた時、この差は決定的になります。何故なら、ゲームを遊んでいない人もテレビ画面を観ることで遊びを共有できるからですね。周りで見てる人も「今いた!あそこあそこ!」と参加したくなっちゃう楽しさは、据え置きハードならではです。

ゲーム&ワリオなんかはそこら辺がメチャクチャうまくて、Wii U GamePadを利用することで、むしろテレビを上手に活かしている印象すらあります。誰か1人がWii U GmaePadで秘密の操作をしてたり、ナイショの情報を持ってたりして、残りの人はみんなでテレビを見てゲームに参加して盛り上がれます。

【関連記事】
ゲーム&ワリオで15人マルチプレイを試してみた(田下広夢の記事にはできない。)

 

 

じゃあ、どのくらいの人が5人で遊べるんだろうか

Wii Uには、数こそ少ないながらWii U GamePadを活用した良質なタイトルが出ています。5人で遊んだら本当に面白いですし、他のハードには無い楽しさがあります。しかし、ここで1つ大きな問題があります。じゃあどのくらいの人がその5人プレイを体験できるのだろうか、ということです。

大人のゲームファンは、中々そういう機会を持つのは難しいですよね。友達を5人集めてゲームを遊ぶって、社会人になると結構大変です。

家族でって言ったって、今時5人家族ってそんなに多くないでしょう。僕自身、1人娘がいまして、この子が一緒にゲームをしてくれるぐらいに大きくなるのを楽しみにしています。でも、この子が大きくなったって3人ですよ。5人家族ということは、後2人育てるってことですよね。ちょっと今イメージできないなって感じです。同世代の僕の友人知人や同じ保育園の人たちでも、いないことはないですけど5人家族はレアな印象です。

そもそも、Wiiだって、実はそんなにいつもたくさんの人数で遊ばれて無いと思うんです。4人家族だったとしたって、4人全員でゲームをする場面なんてそう多くないでしょう。実際には3人とか2人とかで普段遊んでいて、たまにお正月とか、ゴールデンウィークとか、そういう時に家族4人でとか、親戚が集まってみんなでワイワイ、みたいな感じで遊ばれているんじゃないかと思います。

 

 

遊ばないと分からないが、遊ぶ機会が無い

 

僕は家で奥さんと2人でニンテンドーランドなんかを遊んでみてるわけですが、イマイチなんですよ。5人揃った時のパワーには全然かないません。

でも、Wiiスポーツってそんなことなかったように思います。例えばWiiスポーツのテニスを4人で遊んだらそりゃあ面白いですけど、1対1の対戦も、コンピューターを相手にして2人で協力してダブルスをするのも、それはそれで面白かったと思います。

また、より重要なのは、面白さが想像しやすいことでした。2人でテニスしたら面白そうだというのはすぐピンときます。Wii Uはまず、5人で遊んでそのうち1人がWii U GamePadを操作したらどう面白くなるのかが分かりにくく、その上、その5人プレイを体験する場面が絶望的に少ないので、一向に面白さが伝わっていかないのです。

実際のところ、今僕が面白さを力説していてもですね、これを読んでいる人のどれくらいが、じゃあうちでもやってみようと思えるんだろう、という気がしてなりません。

ちなみに僕は「代々木ゲームルーム」という、毎週金曜夜にゲーム好きがワイワイ集まって遊べるゲームサロン的な場所を運営しているんですが、そこではWii Uの5人プレイというのはよく遊ばれています。初めて5人プレイをしてみて、面白くてビックリする人もいます。そりゃあそうです、だって5人で遊ぶ機会なんて滅多にないんですから。

 

【関連サイト】

ゲームルーム(代々木ゲームルーム公式サイト)

 

 

面白さが分かりやすくて、2~3人でもポテンシャルが発揮できるゲームが欲しい

 

Wii Uの現状において非常に苦しい点が2つありまして、1つは単純にソフトがものすごく少ないこと。リリースタイトルがあまりに少なすぎます。もう1つは、少ないながらに、任天堂がリリースしているゲームソフトですごく面白いものがいくつかあるのに、これがそのポテンシャルを腐らせていることです。

僕はゲームライターという職業柄、人にゲームを進める機会は多いんですけど、やっぱり5人で遊んで面白いゲームというのは勧めにくいですよ。せめてコンスタントに4人ぐらいで遊べる環境があればお勧めできますけど、2、3人でしか遊ばないというような感じだと、ニンテンドーランドとか、ゲーム&ワリオとか、勧めるべきかちょっと悩んじゃいます。遊べることは遊べますし、1人で遊べる部分もあるんですが、でもやっぱり大人数で遊んでこそ、というゲームなのです。

Wii Uのゲーム、面白いんですよ。Wii U GamePadにもすごく色んな可能性を感じます。だからこそ、このやり方はもったいないと感じてしまいます。ゲームを遊ぶ人たちのライフスタイルをもう一度具体的にイメージをして、岩田社長の言っていた「5人そろって遊ぶことで盛り上がるということに一番チューニングの軸を置きました。」という方向性が本当に正しいのか、実は非常にリスキーな選択をしているのではないか、考え直してみる必要があるんじゃないでしょうか。

来年でるマリオカート8であるとか、大乱闘スマッシュブラザーズは、そういう点の心配があまり無いシリーズだと思うんですけど、今年の年末商戦ですね、Wii Party Uやスーパーマリオ3Dワールドあたりが、何人で遊んで貰うことを想定して調整されているのかというのは、すごく気になるところです。

毎週金曜夜19:00より、ワイプ代々木北口駅前店にて、みんなでゲームを持ち寄って遊べるゲームサロン的場所「代々木ゲームルーム」やってます。詳しくはこちら