2013年

6月

06日

任天堂がE3で大規模プレゼンを行わない理由

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エレクトロニックエンターテイメントエキスポ、通称E3。世界最大のゲームの祭典ですが、今年は現地時間の6月11~13日にロサンゼルスで開催されるということで、いよいよ、まもなく、もうすぐという感じになってきました。

 

E3では、毎年開催される直前に各メーカーの大規模プレゼンテーションがあることが通例となっておりますが、任天堂は今年このプレゼンテーションを行わないことを発表しました。これを受けて、こんな記事が出ています。


世界の檜舞台・E3から降りる任天堂……“ガラパゴス”へ一直線か(ITメディアニュース)


タイトルがわりと最悪で、これだとE3に出展しないみたいに読めちゃうんですけど、そういうわけじゃありません。E3にはかなり大規模なブースで出展します。


E3には出展するんですが、恒例となっている大規模プレゼンテーションを行わないということと、他社と差別化した製品づくり、2つの独自路線がガラパゴス化を招くんじゃないかというのが論旨です。


大規模プレゼンテーションをしないことをガラパゴス化というのにかなり違和感のある記事なんですけど、そもそもなんで任天堂が大規模プレゼンを行わないかという説明が乱暴すぎるように感じました。記事では、担当者から聞いたとして、新しいハードが無いことだけを理由として挙げていましたが、担当者のコメント以前に、決算発表会でもう少し詳しい話をしています。また、記事では

 

任天堂の選択は、ライバルのソニーやMSに、戦わずして背中を見せたと言っても過言ではない、異例の判断だ。

 

というようなとても消極的な印象を与える書き方をしていますが、これにも大分違和感があります。確かに大規模プレゼンテーションを行わないというそれだけを聞くとすごく消極的に感じるんですけどね。


というわけで、任天堂がE3で大規模プレゼンテーションを行わない理由をもう少し詳しく解説してみたいと思います。

 


「世界に向けた全方位向けの」大規模プレゼンテーションを行わない


任天堂は、単に大規模プレゼンを行わないということではなく「世界に向けた全方位向けの」大規模プレゼンは行わないという言い方をわざわざしています。これが新しいハードが無いということと結びつきます。


新しいハードが出ますよ、こういう機能がありますよ、こういうスペックですよ、というのは、全世界に向けて発信したい情報です。コントローラーはこんな風になりました、みたいな情報は共通ですから。一方、コンテンツとサービスに関しては地域によって大きな違いがあります。


ちょうど分かりやすいのが先日行われた次世代Xbox、Xbox Oneの発表。ハード面に関してはいいんですよ。性能はこうなりますよ、新しいKinectはこんな風にパワーアップして全てのハードに同梱されます。これは日本でも共有して価値の高い情報です。でも、サービスとコンテンツになるとそうはいきません。テレビや映画や音楽、全てのコンテンツがXbox One集まるでしょう、と言われても、それはあくまで北米の話で、日本でも同等のサービスが展開されるかは日本向けの発表を待つしか無いよね、となります。


ゲームだって、コールオブデューティー:ゴーストぐらいなら、まだ日本でもコアゲーマーにはピンときますが、アメフトゲームのMadden14と言われても、ほとんどの人はサッパリなわけです。Forza5だってFIFA14だって日本ではたいした影響力を持ちません。

 

ぶっちゃけ日本市場なんて北米に比べたら全然優先順位が低いので、日本ではポカーンでも構わないから、北米を中心にした発表を行なっているわけです。


E3でも似たようなことは実は毎回のように起こっていて、コンテンツやサービスの発表に関しては、地域によって伝えるべきものが変わってきます。任天堂は今回新ハードはなく、コンテンツ中心の発表となるので「世界に向けた全方位向けの」大規模プレゼンテーションは行わないと言っているわけです。


逆に言うと、コンテンツの話題を地域ごとに最適化させて投下する、ということでもあります。元記事では何か伝えるべきものが無くて消極的な手法を取ろうとしているかのような印象で書かれていますが、Wii Uが大苦戦しているなど非常に厳しい環境の中で、今までのやり方を見なおしてむしろアグレッシブな広報、営業活動をしようという意思が感じられます。

 


北米向けには、北米流通者向けイベントと、西洋のゲームメディア向けの体験イベント

 

じゃあ、どういう形の発表をしていくのか、少しお話したいと思います。まず、北米を中心とした海外向け。


北米向けのソフトを日本で紹介されてもあまり響かないということと同様に、日本向けのソフトを北米で紹介しても響かない、ということもあります。例えばドラクエやモンハンは日本では誰もが認めるキラータイトルですが、北米ではそうでもありません。


というわけで、北米では、北米の流通に向けた北米で売れる商品にスポットライトを当てたイベントと、西洋のゲームメディアに対して体験型のイベントをE3で行うようです。


また、E3に行けないユーザー向けに(E3は業界関係者だけのイベントですので、ユーザーは入れません)、ニューヨークにあるNintendo World Storeや小売店などで、E3で公開されるゲームのデモプレイができるイベントを行うようです。

 

北米では、地域にマッチした情報というだけでなく、メディア、流通、ユーザーの3者に対してそれぞれに必要なコミュニケーションを取っていくという戦略のようです。

 


日本にはニンテンドーダイレクト


じゃあ、日本のユーザーにはどうやって情報を届けるかというと、ニンテンドーダイレクトでメディアを介さず任天堂が直接、日本のユーザーの欲しい情報を中心に届けるということになっています。


ニンテンドーダイレクトが一定の影響力を持っていることは誰もが認めるところで、これを最大限活用することで、E3の盛り上がりに合わせて日本でも話題作りをしていこうというのが狙いでしょう。

 

実際、日本のゲームファンは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCE)やマイクロソフト(以下MS)の発表と変わらない注目度でニンテンドーダイレクトを見るんじゃないかと思います。

 


大規模プレゼンテーションを行わないことのいいところと悪いところ

 

というわけで、大規模プレゼンテーションは行わないけども、それは発表するものが無いからあんまり動かないよ、という話ではないということをお話してきました。ただ、こういう今までに無いやり方にリスクが無いかと言われれば、そりゃあ危険もあるよね、とは思います。

 

そもそも、冒頭でご紹介した記事のようなものが出てくること自体がリスクと言えるわけですが、大規模プレゼンを行わないことでE3で存在感を示せない、簡単に言うと目立てないかもしれない、という懸念はやっぱりあると思います。SCEとMSは新ハードのより具体的な話をしてくるわけですしね。メディアでの扱われ方に差が出るんじゃないか、みたいなことは当然考えられるわけです。


一方で、全世界に対して北米向けコンテンツを紹介するぐらいなら、日本には日本で人気のあるゲームの話をした方が盛り上がるんじゃないか、とも思います。

 

ゲームが専門でないメディアの目はともかくとして、この業界のコアなユーザーは目が肥えてますから、イベントが派手かどうかみたいなことよりも、紹介されたゲームが本当に面白そうだったかどうか方が口コミには影響するでしょう。

 

 

勝負のE3


任天堂は2014年の3月期決算で1,000億の営業利益を出せなければ岩田社長が経営責任を取るというような内容の発言をしています。ですので、Wii Uの現状を考えればE3の発表は非常に重要で、消極策を取るわけがありません。


むしろ、今までの方法とガラッと変えてきたというのは、勝負をかけているということだと思います。それが成功するのかどうかは分かりませんが、新しいことにチャレンジするという姿勢は大いに歓迎して、発表の中身に期待したいと思います。折角日本向けの発表をしてくれるということですし。

 

お祭りですからね、楽しみましょう!

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