パズドラのコンテニュー課金がアーケードのそれより優れているところ

今日、ゲームのお店関係の人とお酒を飲んでいて、パズル&ドラゴンズ(以下パズドラ)の話になりました。で、その時に、ソーシャルゲームをやらない人からパズドラは他のソーシャルゲームと何が違うのかと聞かれたんで、いくつか要素を挙げたんですが、その中でコンテニューに課金をする、というのでちょっと 盛り上がりました。

パズドラで課金をする(正確には魔法石という課金アイテムを買って、その魔法石を使う)目的というのはいくつかあって、例えば、レアなモンスターが手に入るガチャだとか、モンスターをキープしておくためのモンスターBOXの枠を増やすとか、ダンジョンを探索して途中で死んでしまった場合に復活するコンテニューなんかもその1つです。その時「それって、つまりアーケードゲームの100円と同じってことだね」と言われたんですね。コンテニューですからそうなんですけど、でも同じではないんですよね。



最初は遊んで損はないと思うが、

遊んでるうちにここでやめたら損かもと思う

まず決定的に違うのが、お金を最初に入れない、というところです。パズドラにかぎらず多くのソーシャルゲームが採用しているフリートゥプレイ、という仕組みですね。アーケードゲームは、最初に100円を払って貰わないと、とにかく始まりリません。単純にそれがないから、とりあえず遊んで貰いやすい。プレイしている人は知ってると思いますが、パズドラは別に課金しなくても、暇つぶしに遊べるパズルゲームとしてよくできています。タダでそこそこ遊べるパズルゲームが楽しめる、それって普通に嬉しいことです。

で、ここからがパズドラの上手なところで、ダンジョンを攻略していると、途中でどんどんモンスター が手に入ります。あるいは、ボスを倒すと、よりレアなモンスターが手に入ったりします。ところが、途中で死んでしまうと、それまで手に入ったモンスターは全て手放し、ダンジョンもまた最初からやり直しです。

最初はタダだから、遊んで損はないということで始めるわけですが、どんどんモンスターが手に入って、もうちょっとでボスが倒せそうと思うと、ここでやめたら損かも、と思うタイミングが訪れます。

アーケードゲームとか、もっと言えばコンシューマーのパッケージなんかは特にそうなんですが、遊ぶ前にゲーム体験の価値を認めてもらって相応のお金を支払ってください、とお願いしなければいけません。パズドラのコンテニューは、ゲームの中で価値を創造して、それはお金を払ってでも確保する価値がありますか、と後から 聞いてくるんです。フリートゥプレイの基本と言えば基本でしょうけど、うまーく楽しく遊ばせて、ゲーム体験から価値づくりを積み上げて、ユーザーが納得して課金する状況を自然に作るあたりは、やっぱり上手だなあと思います。これができないと、ガワに頼るしかなくなりますから。つまり、既存のゲームやアニメなんかのブランドを使って、その価値観で課金してもらうということですね。



パズドラって何がスゴイの、と、よく聞かれる

ガンホーはパズドラの大ヒットで、平成24年度通期業績は営業利益が前期比8倍とかいう、わけのわからないぐらいの伸びを見せているわけで、パズドラって何がそんなにスゴイのとよく聞かれます。コンシューマーゲームだと、ここが今までと違って新しく、こういう人達にウケたんです、という話をすることが多いですし、そういう答えを期待されるんですけど、たぶん、パズドラはそういうことじゃないんですよね。

色んなところが少しずつ良くでいていて、それらが有機的につながっています。ゲーム体験からお客さんの感じる価値、そしてそれを課金で回収する方法までが1つの生態系として機能しています。コンテニュー課金の話はそのうちの1つにすぎません。

 

ソーシャルゲームだけにとどまらず応用が効きそうな部分がたくさんあって、よくよく学ぶところがあるゲームなんですが、それがコンシューマーの大手メーカーではなく、オンラインゲームを手がけてきたガンホーから出てくるというのがまた、また大変に興味深いところです。