ソーシャルゲームから子どもを守る

最近ソーシャルゲームの取材をちょくちょく受けます。年末に産経さんの取材を受けましたし、今日もとあるテレビ局さんから取材の依頼がありまして、リサーチしたいということで電話で色々お話させていただきました。


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きっかけは、GREEが未成年者に過大請求していたという件です。本来未成年者が課金する場合、1ヶ月の課金上限を、19歳から16歳は1万円、15歳以下は5千円、それ以上はシステムで課金できないようにしていんたんですが、クレジットカードを使った場合それが機能していなく、2,811万円が過大請求となっていて、これを全額返金するという発表をしました。


ソーシャルゲームでは、6月にコンプガチャの規制がありました。いわゆるガチャと呼ばれる1回300円程度でできるくじ引き形式の遊びにおいて、レアなカードを複数揃えるとさらにレアなカードが貰えるというような仕組みがありまして、コンプリートするガチャでコンプガチャというわけですが、これは景品表示法違反であるという見解が消費者庁から出されたことで、各社一斉に取り下げた経緯があります。にも関わらず、国民消費者センターでは昨年よりもソーシャルゲーム等のオンラインゲームにおけるトラブルが減るどころか増えてるということで、何が原因なのか、という取材を受けてるわけです。


増えてる原因は何かって話は分かりやすくて、ソーシャルゲームが流行っているからです。コンプガチャの規制にも関わらず市場規模は前年度比で30%程伸びているそうで。もう1つ挙げるのであれば、コンプガチャはトラブルの決定的な要因では無かったということも、これは結果から類推して言えるかと思います。つまり、コンプガチャは無くなったけど、各社それぞれあの手この手で課金してもらえるよう手を尽くした結果、市場は大きくなり、トラブルも増えたと。

 

信用できないなら、ソーシャルゲームなんてやめたらいい

 

ただ、僕が思うに、この話、ソーシャルゲームメーカーの責任を追求するというのはもちろん必要なことだと思うのですが、最終的に、ソーシャルゲームの仕組みに問題があった、という話で終わるのは良くないと思って、取材を受ける度にそういうことを言ってます。僕も一応、ゲーム業界の人間なので、何かかばってるみたいに聞こえるかもしれませんが、かばうつもりなんて一切ありません。


というか、コンプガチャで指摘されて規制して、で、今回も外部から指摘されて過大請求の公表と返還を決めたというじゃないですか。じゃあ、そんなところのゲームを子どもにやらせるのはやめたらいいんですよ。仕組みがどうこうなんて議論すらする必要はなくて、GREEというところはなんとなく信用できないから遊ばせない、それでいいじゃないですか。信用というものはそういうものです。ゲームなんて娯楽なんですから、安心して遊べないのであれば他の楽しいことをすればいいのです。


で、仕組みがどうなのかというのは、GREEが信用回復の為に自分で必死に考えたらいいんです。GREEの売り上げ知ってますか? 2012年6月期の通期決算、売上1,582億ですよ。3,000万ぽっち子どもから巻き上げて新聞やらテレビやらにワーワー言われていいことなんて何も無いんですから、長期的なビジネスの展望を考えれば、自主規制を徹底するという流れになってしかるべきでしょう。

 

 

それで子どもは守られるのか?

 

でも大事なのは、GREEが自主規制を徹底させたら子どもたちは守られるかということですよ。僕はそうじゃないと思うんです。この話のポイントは、子どもたちが何万も、何十万も、しかも自分のお金じゃないのに使っちゃってるということでしょう。

 

今回のGREEの件で言えば、クレジットカードを使っていると判別がつかなかったという話で、子どもはクレジットカードを持てるわけがないわけですから、普通に考えて両親のクレジットカードの情報を何らかの形で使っちゃってるわけですよね。そういう状態で、GREEがなにしようったって、じゃあ、お父さんのスマートフォンで遊んだらどうなんだと、お母さんのアカウントを勝手に使ったらどうなんだと。家族共有のタブレットPCで両親のIDでログインするのが日常化してたらどうなんだと。

 

それで月末になってクレジット会社から何十万とかって請求がきて、お母さんもお父さんもギャーッてなって、子ども問い詰めて、なんならちょっと嘘ついてごまかそうとしたりしちゃって、またそれでギャーッてなって大変な思いをするわけです。

 

10万とか、20万とかって話があるんで感覚がおかしくなっちゃいますが、1万円だって5千円だって、中学生や小学生が親のお金を勝手に使ったら問題ですよ。そんな子に育てた覚えはなかったのにって、これじゃあドロボウと同じじゃないかって泣いちゃいますよ。社会問題にはならないかもしれませんが、家庭では大問題です。

 

便利なものって危ない

 

これ、ゲームに限った話じゃないんです。僕最近、スマートフォンとかタブレットPCとかで電子書籍を読んでます、主にマンガですけどね。正月は「おれは鉄兵」全巻買って読みました。超手軽です。クレジットカードを登録してあれば、欲しい本を選んだ後、決済はボタン1発です。ブラウザを再起動すればIDとパスワードは聞かれますが、クレジットカードの情報を毎回入力なんてことはありません。全巻一気購入もできます。おれは鉄兵全33巻、1万円以上します。すごく便利なんですけど、便利すぎてちょっと怖くなります。

 

便利なものって、危ないものが多いんですよ。大変なことが簡単にできてしまうって、危険なんです。クレジットカードとスマートフォンの組み合わせなんて超危険です。でも、世の中はどんどん便利で、どんどん危険な方に進んでいきます。

 

だから、子どもたちを守るためにまず大事なことは、クレジットカードとか、携帯電話とか、そういうものを使って課金するということがどういう仕組みで、どういうことが起こるのか、これを両親が知る必要があります。大人だって、分かっているつもりで、本当には分かっていないかもしれない、ということを理解する必要があります。じゃないと、子どもがせがむから1回だけと思って、クレジットカードの情報を入れたら、その後もどんどん課金できちゃったみたいなことが起こるんです。

 

その時、悪いとことと分かってやったにしろ、分からずにしてしまったにしろ、大きな問題を抱えないように大人が導く、そういう意味で子どもを守らなければいけません。

 

最近のソーシャルゲームの話は、これから訪れる便利で危険な社会が抱える、大きな問題の予兆のようにも感じました。ゲームが信用できないと思ったら子どもにゲームを遊ばせない、それでもいいと思います。でも大事なことは誰が悪いか、何が悪いかではなく、どうやって子どもを守るかであることを忘れてはいけません。大きな環境の変化が起きていて、そこに大人がついていけなくなると、子どもを守れなくなるおそれがある。そういう危機感は持っていていいんじゃないかと思います。

 

そして、ゲーム業界は安心してたくさんの人に遊んで貰えるように努力する他ありません。ゲームなんて遊ばなきゃよかった、そんな風に子どもに思われてしまったら、ゲームなんて存在する意味がないのです。