2013年

8月

21日

子どもの自主性はスプーンの3cm先にある

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冗談みたいな話なんですが、2013年8月8日付けの朝日新聞朝刊の教育面に、子どもがゲームばかり遊ぶことがないようにする為に、偶然を装ってゲーム機を踏んづけて壊してもいい、なんていう話が掲載されたようです。

勉強しない子供のゲーム機は「踏んで壊していい」 朝日新聞の夏休み「親へのアドバイス」にネットで批判(JCASTニュース)

「今からできる!夏休み勉強法」という特集記事で、有意義な夏休みにする為の方法を塾講師の方が語っているんですが、あまりに酷い。以下、2013年8月8日付けの朝日新聞朝刊20面から一部引用

 


ゲームをしたりテレビを見たりしてだらだらすごす余裕はありません。ゲーム機はしばらく親に預けてみよう。(ご両親は、ゲームをしないように説得しましょう。極端に言えば、偶然を装って踏んづけて壊したっていいんです)。「算数を得意にする」「自由研究を工夫する」など、自分でやる気になるような目標を一つでいいから立てよう。夏休み後半、意欲的に過ごしましょう。


当たり前のことですけど、こうやって新聞に載るからにはその当たり前のことが分かっていない大人がいるということなので、一応言っておきます。

誰かが大事にしているものを踏んづけて壊してはいけません。ゲーム云々の話ではなく、人が人に尊厳を持って接するという一番当たり前の一番大事な話として。あまつさえ「偶然を装って」なんていう卑劣な行為は決して認められるものではありません。

僕はゲームライターですから、ゲームが悪者にされれば悲しくなります。でも、これはゲームだけの話にしてはいけないと思っています。

自分の大事なものを両親から踏んづけて壊された子どもが、誰かの大事なものを尊重できるでしょうか。他者と信頼関係を結べるでしょうか。大切にしているものを壊された子どもは、その後の夏休みを意欲的に、自分でやる気になって過ごせるのでしょうか。

なんだかこんな記事を見ると、残念な気持ちでいっぱいになります。

さて、この記事のおかしいところを1つ1つ挙げて文句をつけていくというのは、あまりに無駄ですから、かわりに子どもの自主性について、1歳になる僕の娘が通っている保育園で聞いて、なるほどと感心した話をご紹介したいと思います。


保育園で聞いた、離乳食の食べさせ方

もう何ヶ月も前の話なんですが、4月に保育園に入園しまして、その時に離乳食についての説明を受けました。その時、娘が通っている保育園では離乳食のスプーンを赤ちゃんの口元からすこしだけ離したところにもっていって食べさせる、という話を聞いて、なるほど、素晴らしいと僕は感激したのです。

どういうことか説明するには、まず赤ちゃんの離乳食を始める時の様子を説明しなければいけません。

それまでお母さんのおっぱいとか、哺乳瓶のミルクしか飲んでこなかった赤ちゃんが、初めてスプーンで食べ物を差し出されるとどうなるか。まず、普通に食べてはくれません。最終的に口の中には入れてくれます。少なくともうちは入れてくれました。でもそれは、食べ物を食べるためではなく、その時期の赤ちゃんがなんでも口にいれてモノの感触を確かめる為です。

ですから、最初にスプーンを見た時の赤ちゃんの反応は、「おっ、新しいおもちゃ!」ぐらいの感じです。とりあえず手でグイッと掴んで、振り回して、離乳食が乗っている部分を指でグリグリしてみて、大方の離乳食が床やらテーブルやらにこぼれたあと、口にも入れてみます。ヘタをすれば、柄の方を口に入れたりも。


離乳食を口につっこむ

そうすると、自然な成り行きとして、親はスプーンで離乳食をよそった後、赤ちゃんの手をどけつつ、口の中に直接つっこみます。つっこむなんて書くと乱暴に聞こえますけど、自覚的には、やさしく口の中に運んであげているのです。でも後から客観的に考えて、これはスプーンを口につっこんでるという行為だな、と、僕は自分で思いました。

何も情報を得なければ、これが日常化するわけで、何も考えずに毎日赤ちゃんの口にスプーンをつっこみます。おいしいねー、なんていいながら、口につっこむ。赤ちゃんの方も、つっこまれればモグモグなんだか美味しいゴクン、とするので、疑問の余地もなく食べます。

そういうもんだと思っていたわけです。それでまあ問題もないですし。

そんな時に、保育園で、うちでは赤ちゃんの口元から少しだけスプーンを離して離乳食をあげるようにしています、という話を聞いたのです。そうすることによって、赤ちゃんが自分で、食べたいと思って、スプーンを口に入れます。その食べたいという意思を大事にしよう、育もう、というのです。

 

僕ははっとしました。そうか、赤ちゃんが自分の意思で、気持ちで行動する機会をいつの間にか潰してしまっていたのかもしれない、と。


嫌がる赤ちゃんを見て喜ぶ親

スプーンを赤ちゃんの口から話すと、赤ちゃんが自分でスプーンに口をよせてバクッと食べてくれます。それは親にとって、大変に嬉しいことです。

なぜなら、それまでこっちが口につっこんでいては分からなかった、赤ちゃんの食べたいという気持ちが伝わってくるからです。「美味しいねー」なんて言いながら食べさせていましたが、本当に美味しいかどうかは分かっていませんでした。でもそれが、ああ、美味しいんだ、食べたいんだ、と分かります。

しかしもちろん、逆もあります。うちの娘で言えば、突然さつまいもを食べなくなりました。スプーンを出しても口を開きません、自分から食べません。そのうち、はっきりと拒否して、スプーンを手でどけるようになりました。好き嫌いです。好き嫌いというと、なんだかネガティブな印象があるかもしれませんが、僕や奥さんは好き嫌いする娘に感激しました。

 

ただされるがままだった赤ちゃんが、今や自分で味の好みを選択して、食べたいものは一生懸命食べて、食べたくないものは拒否しています。なんにも分からず「だばあ」としていた頃と比べて、はっきりとした強い意思、知性を感じます。

好き嫌いが、できるようになったのです。


目の前まで運んであげて、そして見守る

食べなかったさつまいもですが、その後奥さんが手づかみで食べれる鶏ひき肉とさつまいものお団子というのを作ってくれたことで解消しました。最初は渡してもグシャッと潰すだけでしたが、まず親が美味しそうに目の前で食べて見せると、真似をして赤ちゃんも口にいれます。1つ食べると気に入ったのか、ニタアと笑って、その後は楽しく手づかみで食べれるようになりました。


保育園でスプーンの話を聞いてから、なんとか自分で食べてくれるのが一番いいと奥さんが工夫してくれた結果です。自主性というのは、こうやって育まれるのかもしれないと、その時感じました。

僕もこれから、子どものすることがどうしても許せなくて、強引にコントロールしたいと思うことが色々でてくるんかもしれません。それでも、大事にしてるものを間違ったふりをして壊してしまうなんてことだけは決してしたくはありません。

赤ちゃんである娘との間で今できていることを大事にして、出来るかぎり、スプーンで美味しいものを目の前まで運んであげる、そこから先は自分で食べるのを待つ、そういうことが続けられるように頑張りたいなあと思います。

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