ゲームを売っているのか、売れるゲームを置いているのか。

 

 

いくらゲームの中身が面白くても、最初に売れないと評価されると、そこから這い上がるのがとても難しいというゲーム業界のお話を、僕がコラムを連載している「AllAboutゲーム業界ニュース」で書きました。

 

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売れないゲームが売れない構造(AllAboutゲーム業界ニュース)

 

この記事、大変に反響がありまして、アクセスもたくさんいただきましたし、ゲームを作っている人なんかからTwitterで直接感想をいただいたりもしました。というわけで、もう少し、その続きといいますか、書ききれなかったお話をしてみたいと思います。

 

 

ゲームを売っている店、売れるゲームを置いている店

 

売れないゲームが売れない構造」で、売れないゲームの発注に対して非常にシビアに考えるという話をしましたが、あれはつまり、ゲームを売る商売においては、新品ソフトの利益率の低さから、在庫管理が非常に重視されているという話です。

 

それはややもすると、ゲームをお客さんにたくさん売ることよりも優先されるかもしれません。というか、事実上、されていると言っていい気がします。だからこそ売れないスパイラルが起こるんです。面白いけど売れないゲームがあったとして、その面白さを伝えてお客さんに売ることよりも、不良在庫を残さない為に発注を抑える方が優先されるので、最初に売れないと評価されるとそこから浮上することができないんです。

 

それはちょっと穿った書き方をするならば、ゲームを売っているというよりは、売れるゲームを置いている、といった方がよいかもしれません。

 

もちろん、中には工夫をして、独自の集客や販促に力を入れているお店もあります。でも、全体で見た場合には、まず在庫管理が優先されて、その中で、たくさん売れるゲームに関しては販促も力を入れていくという順番がほとんどではないでしょうか。

 

ポイントは、それが正しいとか、間違っているとか以前の問題として、商売としては売れるゲームを棚に揃えることが重要で、面白いゲームを売ることが重要になっていないという事実がある、ということです。

 

ただし、このやり方だと、新しいゲームがお店発信で伸びる可能性が限りなく低くなることも確かです。

 

 

メーカーはユーザーに売っているのか、お店に売っているのか。

 

もうひとつ、今度はメーカー側が誰をお客さんにしているだろうか、という話があります。ゲームを遊ぶのはゲームユーザーで、これがメーカーの最終顧客になるわけですが、その最後のところを見ず、ゲームを直接買ってくれるお店の方ばかりを向いているというケースがわりとあるように思います。

 

そうすると、どういう状況になるかといえば、ゲームの面白さをお店に伝えなくなるんです。お店は先程お話したように、ユーザーにゲームの面白さを紹介するより、売れるゲームを棚に並べることが重要ですから、売れるか売れないかが知りたい。そのため、メーカーの方もゲームの面白さは置いてけぼりになって、売れるかどうかに話が集中していきます。例えば、あらゆるゲームの中身が、パーツごとに分解されて、こういうものを欲しがる人がいるという結論に繋がります。

 

キャラクターデザインは人気作家を起用したからファンがたくさんいるよ、とか。成長要素があるからRPGが好きな人が喜ぶよ、とか。マルチプレイがあるからモンハンユーザーが食いつくはず、とかですね。

 

もちろん商売ですから、売れる売れないの話は1番大切なんですが、ただそのせいでゲームの内容がぼやけるのは、やっぱり問題です。 人気作家がキャラデザして、成長要素とマルチプレイのあるアクションゲーム、みたいなことを言われたとして、それが面白いのか面白くないのかは全然ピンときませんよね。

 

これではやっぱり、メーカーがお店を通してユーザーにゲームの面白さを伝えるということは、困難です。

 

 

面白いものが売れなければ、ゲームは面白くないということになる

 

で、こういう現象はあまり良くありません。何がよくないかというと、世間は売れたもので判断するので、面白いものが売れなければ、ゲームは面白くないということになるんです。しかし、必ずしも面白いゲームが売れる構造にはなっていません。

 

こういうことを放ったらかしにしておくと、「最近ゲーム面白くなくなったよね~」なんて言われて少しずつ業界全体が衰えていくんです。面白いゲームがあっても、無いことにされて。 だから、いつでも、面白いゲームが世の中に出ていくよう、努力する必要があります。ゲームが良くできてれば必ず売れるなんて、そんな都合のいいことはありえなくても、面白いもの、新しいものが少しでもたくさん世に出ていく、そういう環境を目指すことは大切です。

 

ここまでお話した通り、ゲーム業界の売る現場はゲームの中身、エンターテイメントの質やゲーム体験の具体的なイメージについての話がすごく足りません。 売れるか売れないか、という話はいつも出てきますが、面白いの、面白くないの、どう面白いの、誰が遊ぶの、どうやって楽しむの、という話は、本当に弱いと思います。

 

このところが改善されないと、いつまでたっても売る現場は中身の話になりません。売上は大事だけれども、中身をそっちのけにして売上がついてくるかといえば、長い目で見たときにはそうじゃないわけで、じゃあ、それはやっぱり変えていく必要があります。

 

すごく当たり前の話なんですが、ゲームの面白さを真剣に考えて、それを楽しめるユーザーを見つけて、売上を伸ばすということを、地道にやらなきゃいけないんだと思います。すいません、普通の話で。でもきっと、そんな普通のことが難しいから、大変なんです。 

 

 

おまけ。

 

実は去年から少し、ゲームのお店の方々や、ゲームメーカーの方々とも協力をして、ゲームの面白さをユーザーに伝えて売っていくということのお手伝いをしております。僕ができることは少なく、地を這って月を目指すような活動かもしれませんが、 やらないよりもやった方がいいことというのはあると思ってます。

 

もしメーカーやお店や、メディアの方など、興味のある方がいらっしゃいましたら、ご連絡くださいませ。情報交換でもさせていただければと思います。Twitterなどで、個人的にでもかまいませんので、どうぞ宜しく。

 

連絡先はこちら

 

Twitterは、「@TaoriHiromu」まで。