2014年

12月

23日

ボタンを押すとテキストが流れる、というゲームの文化

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先日、「428 ~封鎖された渋谷で~」「3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!」なんかのアドベンチャーゲームで有名なゲームクリエイター、イシイジロウさんと、出版界で知の巨人とも呼ばれる編集工学研究所の所長、松岡正剛という方の対談がありまして、僕はその対談の司会をしていました。

松岡正剛さんという方は、出版の世界では大変な重鎮なんですが、この方がサイバードのスマートフォン向けゲームアプリ「NAZO」の制作に関わったということで、物語の表現方法の1つとして、ゲームというものに興味を持ってらっしゃいます。で、ゲームで物語を表現してきた、しかも本に近い、テキスト主体の物語をを作ってきた人と言えば、イシイジロウさんの名前が挙がります。

この2人が、本における物語と、ゲームにおける物語について、クロスして話をしたら面白いんじゃないか、というのが対談の趣旨です。

そこでは色んな面白い話がでるんですが、その中で、ゲームのテキストの流し方の話について紹介したいと思います。ゲームをしている人間からすると、もう当たり前すぎて深く考えないぐらいなんですが、松岡さんのような、出版の世界で活躍し、ゲームの知識はあまりない、というような方が見ると、すごく新鮮だったみたいです。そして、その、ゲームをしない人から見たら新鮮だ、という事実を踏まえてみると、ゲームの当たり前がとても面白い進化であることに気がつきます。

以下の話は、対談で主にイシイさんが教えてくれた話ではありますが、実際にしゃべった内容を僕が咀嚼して書いているものです。なので、イシイさんが言ったことそのままじゃないですし、僕の解釈でちょっと変わっているところもあるかもしれません。

元の話が知りたい人は、対談が動画でUPされているので、そちらをご覧ください。これ以外にも面白い話は山ほどありました。今回のお話は、その動画の宣伝も兼ねている、ということで。

 

【関連サイト】

 

「NAZO」記念 松岡正剛氏×イシイジロウ氏対談@編集工学研究所

 

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紙の本を再現する電子書籍と、ボタンを押すとテキストが流れるゲーム

電子書籍って、色々あるんだろうけれど、主流となっているものは基本的に紙の本の再現という方向性だと思います。デジタルでテキストを読ませる手法って他にもっとないだろうか、と考えると、ゲームは全く違う方法論をとっているわけです。

イシイさんは、ゲームのテキストはリズムゲームだと言いました。リズムゲームと言っても、リズムに合わせてボタンを押さないとゲームオーバーになるという意味ではなく、ボタンを押してテキストを流すリズムが気持ちよくないと、そのゲームは楽しくなくなる、という意味です。

実際、テキストをたくさん読ませるゲームで、うまくできている、テンポがいいゲームは、テキスト送りが気持ちいいんじゃないかと思います。

もし、ドラゴンクエストシリーズ(以下ドラクエ)で、村人や王様に話しかけた時、内容が全部ばばっと表示されたら、なんかピンと来ないですよね。話している雰囲気もでません、そしてきっと味気ないでしょう。ドラクエは昔から、文字を送るのが気持ちよかったんじゃないかと思います。


ゲームは、文字の読ませ方をどんどん進化させている

ドラクエはテキスト送りを演出として、巧みに使っていました。人と話す時は「ポポポポポ…」と音がするのに、ガイコツに話しかけると無音で「返事が無い、ただのしかばねのようだ」なんて表示されるとドキッとしますよね。ゲームの世界というのは、テキストを読ませる演出の工夫を随分昔からやっていたわけです。

その最高峰の1つが、たぶん逆転裁判シリーズでしょう。文字の送り方、人物のアニメーション、そしてSEで強烈に緩急をつけながら、独特のテンポを刻みます。まさしく、テキストを送っているだけで楽しいゲームです。

もう1つ、面白い例として、イシイジロウさんが手がけた「タイムトラベラーズ」というアドベンチャーゲームがあります。このゲーム、フルボイスなんですけど、特徴的なのはボイスと文字がシンクロしてるんですね。声が出るタイミングと、文字が出るタイミングが一致してるんです。

やってみると分かりますけど、すっごい気持ちいいんですよ、これ。普通は、声よりも先に文字が読めちゃって、後から声がついてくるんですよね。だから、内容はほんの少し先に分かってしまっていて、それをもう1度声で聴く、というのを繰り返さないといけません。これが完全にシンクロしていると、実に気持ちいい。ゲームが大容量化して、文字のセリフに声が入るようになって、そしてその先の進化として、文字と声のシンクロがあるわけです。


ゲームの進化は気がつかれていないかも

ゲームというのは、文字を読ませるデジタル作品として、大量に作品が作られていて、その中で工夫に工夫を重ね、新しいアイデアが試され続けていました。

今、枠にとらわれずに、自由に電子書籍の形を考えてみよう、なんてことで、例えば文字はボタンを押すたびに流れていく形にしてみたらどんなことが可能になるかとか、文字と一緒に挿絵がアニメーションしたらどうだろうとか、文字と声がシンクロしたらどうなるかとか、考えてみると、あらかたゲームがやっているわけです。しかも相当に練り込まれたレベルで。

やっているわけですけど、それがゲームの外の世界の人達に知られているかと言えば、そうでもないでしょう。逆転裁判は人気のゲームですけど、世の中には遊んでいない人の方が多いです、タイムトラベラーズだって、知らない人がたくさんいるでしょう。

知の巨人と呼ばれる松岡正剛さんが逆転裁判やタイムトラベラーズを遊んでいるかと言えば、遊んでいないわけです。そりゃそうなんですけど。だからこそ、松岡さんはイシイさんの話を実に興味深そうに聞いていました。

対談の帰りに、イシイさんと話をしていたんですが、こういう、ゲームの当たり前のこと、もしかしたら作り手も自覚せずにやっているようなことを、外の世界に伝えていくということも必要なのかもしれない、と。

ゲームの文化が、もっと他のメディアに刺激を与えて、ミックスされて、新しい発想がでてくる、というのが盛んに起こっていいような気がします。松岡さんとイシイさんの対談も、そういうきっかけになるような企画で、またこんなことができたらと思ったりしています。

 

対談では、これ以外にも、もう少し広範囲に文字を読ませるというだけでなく、「物語」がゲームで扱われると、他のメディアとどう変わるか、お話がされています。興味を持った方はぜひどうぞ。

 

【関連サイト】

 

「NAZO」記念 松岡正剛氏×イシイジロウ氏対談@編集工学研究所 動画

 

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