ゲーム雑誌編集者に聞いてみたい10の質問

電撃ゲームスのおしょうさんこと、編集長千木良 章さん。
電撃ゲームスのおしょうさんこと、編集長千木良 章さん。

先日ですね、出版社のアスキー・メディアワークスさんに行って参りました。何をしに行ったかというと、アスキー・メディアワークスから出版されている月刊ゲーム専門誌・電撃ゲームス編集長千木良 章さんに、ゲーム雑誌はどうやって作られるのか、という趣旨のインタビューをしにいったんですね。そのインタビューの模様については、AllAboutゲーム業界ニュースに掲載しておりまして、既に見ることができます。

 

【関連記事】
ゲーム雑誌ができるまで(AllAboutゲーム業界ニュース)

 

で、実はこのインタビューをする際に、1つ仕込みをしておりまして。僕がやっているTwitterでですね、フォローしてくださってる方にこんなことを聞いてみました。

 

Twitter@TaoriHiromu

みなさん、こんばんは。突然ですが、ゲーム雑誌の編集者に聞いてみたいことがあったら教えていただけませんでしょうか。

 

そうしたらですね、みなさんからたくさんの質問をいただきましたので、それをたずさえまして、インタビューにむかったと、こういう次第でございます。というわけで、今回は電撃ゲームス編集長に、ゲーム雑誌の編集者に聞いてみたい質問をぶつけてみました、という企画です。

 

 

じっくり、たっぷりゲームの情報を読みたい方にオススメのゲーム雑誌です。
じっくり、たっぷりゲームの情報を読みたい方にオススメのゲーム雑誌です。

電撃ゲームスとは

 

最初にちょっとだけ、電撃ゲームスのご紹介をしておきます。電撃ゲームスはアスキー・メディアワークスから出版されていまして、コンシューマーゲームを中心に、あらゆるゲームジャンルを網羅するゲーム総合誌です。

 

大きくて、厚くて、文字ビッシリの情報量の多さが魅力的でして、新作ゲームの紹介やレビューはもちろん、ゲーム業界人へのインタビューがすごく多かったり、発売してしばらく経ったけど、これは面白かったよねというゲームをもう一度ピックアップしたり、読み物的なところが強い雑誌になっています。よろしければ、ぜひ、読んでみてください。コンビニでは一部を除いて流通していないので、探すときは、本屋さんで。

 

【関連サイト】

電撃ゲームスONLINE(公式サイト)

 

 

電撃ゲームス編集長 千木良 章さんへの10の質問

 

田下:それでは、早速質問に答えていっていただきたいと思います。

 

千木良:はいはい。

 

 

質問1 ゲーム雑誌の編集者にはどうやったらなれるのか?

 

 

千木良:これまちまちなんですよ、本当に千差万別で。まあ今だと雑誌の奥付とかに、ライター、編集者募集ってあって、で、面接に来ていただいて、フリーランスのゲームライターさんとして契約、というケースが多いのは確かです。僕らの時代、今から15年前くらいの、サターンとか初代プレステ時代に入った人間はもっと色々ですね。例えば僕はこの仕事やる前に何やってたかっていうと、学校の教師なんですよ。

 

田下:えーっ!? そうなんですか?

 

千木良:ええ。しかも、高校で美術の非常勤講師をやってたんですよ。で、非常勤講師なので担任とかもたないので、夏休み暇なんですよ。それで28歳の時に、知り合いがゲーム雑誌のデザイナーをやっていて、ある日、暇だったら電撃SEGA EXという雑誌を立ち上げるから、ナイツっていうゲームのマップを描かないかと、そう言われたんですよ。

 

田下:おおーっ、ナイツ、セガサターンの名作ですね。

 

千木良:それで泊り込みでマップ作って、マップを描くんだったらついでに記事も書かないかって言われて、それで記事も作って、その時に、ゲームの雑誌作るのって面白いな~って。その後、突然非常勤講師をやめて、単身東京に出てきてゲームライター始めちゃったという。だから、始めたのすごい遅いんですよ。

 

田下:その、アスキー・メディアワークスさんに就職活動して、配属されて、みたいなことじゃないんですね?

 

千木良:ないです(笑)他にも色んなのがいますよ。ゲームセンターで相手をおちょくるようなすごい勝ち方をして、向こうから顔のおっかない奴が出てきて殴られるって思ったら、お前上手いからちょっと雑誌に書かないかってスカウトされて、ひっぱられて編集者になったりとか。

 

田下:なんかそういう風に色んなところからひっぱってきてるんですか? ゲーム雑誌の編集者って。もし、誰かがゲーム雑誌作りたいとか、ゲームライターになりたいとか、編集者になりたいとか思ったら、どういう行動を起こすのがいいんでしょうか。

 

ゲームのイベントに行けていいなあ、とか、そういう憧れだけでは続けられない大変さがあるようです。
ゲームのイベントに行けていいなあ、とか、そういう憧れだけでは続けられない大変さがあるようです。

千木良:まずは面接に応募するとか、とりあえずどんな所なんだとかっていうんでアルバイト的な形ではじめるっていうのがあると思います。ただ、実際にそういう人たちが入ってきて思うのは、長続きするのはゲームが好きだっていう人ですね。そうじゃなくて、ゲーム雑誌のライターという立場が欲しいんだっていう子は長続きしないんですよ、やっぱり。

 

田下:ゲームライターってかっこいいな、みたいなことだと続かないと。

 

千木良:それを上回るぐらいツライ仕事ですからね。ゲームが好きでしょうがないっていようなぐらいの気持ちがないと、そのツラさを克服できないっていう。

 

 

質問2 ゲーム雑誌って何人ぐらいで作ってますか?

 

 

千木良:うちは編集部にだいたい12~13人くらいいますね。ただ、うちの人数って月刊誌にしては多い方だと思うんですよ。月刊誌ってもっと少ない人数で作りますから。だいたい、5人くらいで作ることが多いです。

 

田下:ちなみにそれは、編集部の人数ですよね。ライターさんとか、デザイナーさんとか、外部の人をあわせるとどのくらいのイメージでしょう。

 

千木良:全部関わったひと、ライター、デザイナー、カメラマン、編集もあわせると80人くらいはいると思います。

 

 

質問3 ゲーム雑誌編集者をしてて、楽しいことと、ツライこと

 

 

千木良:基本的に表裏一体です。ゲームをずっと編集部で1日中プレイして、家に帰れないのがツライ人はツライ、でも、いい社会人が1日ゲームしても怒られないんだって思える人は楽しい。例えばあの、うちが出してる、ファイナルファンタジーXIの、電撃の旅団の本があるじゃないですか

 

田下:ファイナルファンタジーXIはMMORPGというジャンルのオンラインゲームで、電撃のゲーム編集者さんが実際に電撃の旅団というチームでプレイしていて、攻略本も出されてるんですよね。

 

千木良:その電撃の旅団の本を出すとき、よく表紙に団員が20人くらい揃って写っているFFXIのゲーム内での集合写真があるんですよ。

 

田下:ありますね、こういうの。

 

千木良:こういうの撮るのに、一晩かかったりしてるんですよ。

 

田下:えー、本当に?

 

千木良:まず、リアルにみんなに電話して、どこどこ集合ねって待ち合わせして、立ち位置が良くないからって修正して、じゃあ揃ったから撮影しようって言うとゲーム内の時間が夜なので、みんなその場で1時間待ってとかって。

 

田下:うわー。

 

千木良:やっと昼になったっていうと、誰かが回線落ちして電話かけてどうしたのってなったり、横向いちゃってるから直してって言ってもそいつが寝オチして電話出てくれなかったりとか(笑)っていうのをひっくるめて楽しいって思えるか、こんなの嫌だって思うか。

 

田下:ものすごいリアリティありますね。

 

 

質問4 このゲーム売れないだろうなあ、と思いつつも記事にすることはある?

 

 

千木良:どっちかだと思いますね、売れるだろうなーって思って記事にする場合と、売れるか売れないか関係なくこれは面白そうだなあと思って記事にするっていうのと。だから売れなさそうで面白くなさそうなゲームは、記事にしないケースがやっぱり多い。

 

田下:それは情報価値が低い、ユーザーのニーズが無いってことですね。

 

千木良:後は、発売前のゲームが面白そうっていうのは、僕らも勘でしかないので、外れることもありますしね。

 

田下:AllAboutの記事の方にちょっと書いていますが、結局ゲームプレイできるのは発売にかなり近づいたタイミングで、それまではユーザーと情報的に大差はないということですね。

 

 

このゲームはここがイマイチ、みたいな情報はゲーム雑誌にいるのかどうか。
このゲームはここがイマイチ、みたいな情報はゲーム雑誌にいるのかどうか。

質問5 発売前のゲームについて、不利になることは書かないように配慮しているのか?

 

 

千木良:レビューに関しては、ロードが遅いとか、マイナスなポイントも書きますね。

 

田下:レビュー以外では、発売前の紹介記事で、あんまり不利というか、ここがイマイチみたいなことは書かれないですかね。

 

千木良:さっきの話と近いんですけど、最終的に、マスターがあがるまで、それが本当にイマイチかどうかすら分からないっていうのは正直なところなんですよ。で、最初にきっちりプレイして書く記事が新作レビューなんです。ただ、体験版をやって、ここがもっとこうなったらいいなみたいな要望的なことは書きますよ。

 

逆に僕がユーザーさんに聞きたいのは、マイナス面を知りたいんですかね、やっぱり。マイナス面って難しいんですよ。僕らが面白いと勧める部分がマイナスっていうこともあって、例えばすごく綺麗なムービーがあって見所ですよって言っても、そんなのいらないって言う人もいるわけで。逆に言うと、明確なのはロード時間とかそれぐらいなんですよ。

 

田下:なるほど。そこのところは、雑誌としてある価値観でもってバッサリ切っちゃうってことはしてないと。

 

千木良:そうなんです。結局、メーカーさんにとっても雑誌にとってもユーザーにとっても、それを声高々に言うことで幸せになるとは思えないんですね。だったら、確実に面白いと思えることを大きな声で言う方がいいんじゃないかというのがスタンスですね。

 

ゲームメディアって批評的な形としては、未成熟だと思ってるんですよ。それは、1つのゲームをプレイするのに時間がかかりすぎるために、1人の人が大量の作品をプレイするのが困難で、あれもこれもプレイした上で説得力持って語っている批評というのが成立しにくいというのが1つあります。

 

また、ゲームメディアが批評誌ではなく、メーカーの情報をユーザーに伝える情報誌として作られ続けて来たっていうこともあります。なので、そこを克服した上で、ちゃんとした視点と説得力をもって、総合的な評価を提示できればいいんですが、中々難しいのが現状だと思います。

 

 

スマートフォンやソーシャルアプリの情報を、ゲーム雑誌はどう捉えているのか。気になりますね。
スマートフォンやソーシャルアプリの情報を、ゲーム雑誌はどう捉えているのか。気になりますね。

質問6 ソーシャルゲームや、スマートフォン向けのゲームが、今後ゲーム雑誌でメインで扱われていくようなことはあるのか?

 

 

 

田下:今、電撃ゲームスだと、メインとは言えないまでもソーシャルゲームなんかについても情報は載っているわけじゃないですか。わりとこのスタイルがしばらく続くのかなって気はするんですが。

 

千木良:そうですね。ぶっちゃけ、読者さんの反響は、従来のコンシューマーゲームの方があるのは確かですけど。

 

田下:それはあれですよね、コンシューマーゲームの方が人気があるんだっていうことではなくて、電撃ゲームスの読者層にコンシューマーゲームユーザーが多いということですよね。

 

千木良:そういうことだと思います。

 

田下:ちなみに、いっそ、スマートフォン用ゲームの専門誌っていうのはあり得ますか?

 

千木良:何か新しい機種が出るから、みたいなタイミングで特別号みたいなことはあり得ると思いますが定期刊行は難しい思います。何故なら、スマートフォンのゲームの情報はスマートフォンで得られてしまうから。

 

田下:なるほど、iPhoneアプリを売るのに最も効果的な媒体はApp Storeであると。というと、例えば今ニンテンドーDSiショップとか、PlayStationNetworkとかあるわけですが、そういうものが大きくなっていくことに対する危機感があったりしますか?

 

千木良:もしダウンロード販売が中心になってくるようなことがあれば、相当変わってくるだろうなとは思います。雑誌も今のままではいられない。ただその場合は、

任天堂さんとか、ソニーさんのハードのコンテンツの中に雑誌の場所を作らせてもらうとか、そういう可能性は模索できますよね。

 

 

ファミコンをやっていた小学生は、今はもう30代です。
ファミコンをやっていた小学生は、今はもう30代です。

質問7 大人向け、シニア向けの雑誌は作られるか? 

 

田下:電撃ゲームスは、比較的上の年代というか、僕は33歳ですけど、自分が読む雑誌としてわりとしっくりくる感じなんですが、もっと上、40代、50代向けというのはどうでしょう。

 

千木良:ファミコンが出たのが83年で、そこで新しもの好き大学生が20歳で遊んでたとすると、今47歳ぐらいなので、あと3、4年すると本格的に50代以上のゲーマーが増えてはきます。でも中年、シニア層向けゲーム雑誌ってまだピンとこないと思うのは、昔のゲームユーザーの感覚がそのまま上にあがっているんですよ。

 

年齢が上になったからって、ゲームの傾向が変わるわけじゃなくって、ドラクエやってる人は、そのままドラクエやってるし。いずれ、ゲームの年齢があがって70歳までいったとしても、いきなり水戸黄門のゲームがやりたいってなるわけじゃないと思うんですよ。70になってもマリオがやりたい、ドラクエやりたい、FFやりたいって言ってると思うんですよ。

 

 

休日に編集部にお邪魔したことがありましたが、結構人がいるなあ、というのをよく覚えています。
休日に編集部にお邪魔したことがありましたが、結構人がいるなあ、というのをよく覚えています。

質問8 やっぱり忙しいですか?

 

 

田下:毎日遅いですか?

 

千木良:毎日遅いというか、早いというか、よく分かんないですね。たまには、朝8時に返って風呂入って10時に出てくるとかありますし。1週間自宅に帰らないなんてこともありますし。

 

田下:千木良さんからのメールって早朝に来てたりしますよね。朝7時とか。

 

千木良:(笑)

 

田下:全然帰らないってこともありますか?

 

千木良:ありますあります。最高で、本当に1ヶ月で4日ぐらいしか帰らないってこともありましたね。ただそれは編集者にもよります。そこらへんきっちりする人もいるし、帰る時間がもったいないっていう人もいる。

 

 

質問10 ゲーム編集者って、ゲームが上手いんでしょうか?

 

 

千木良:人によりけりです。メチャクチャうまい人もいるし、そうじゃない人もいる。さっきちょっと言ったみたいに、パターンとしてメチャクチャ上手いからひっぱってこられたっていうケースもあるので。

 

田下:逆に、下手糞っていう人もいる?

 

千木良:いますね。だから、ゲームが下手だとゲーム編集者になれないかっていうと、実はそんなことなくて、上手な人だと気がつかないところが指摘できるんですよ。普通の人はここのところが難しいんだよ、みたいな。

 

田下:その視点はすごく大事ですね。基準がどんどん上手な人に寄ってしまうというのは、ゲーム業界が陥りがちなところです。というわけで、10個の質問に答えていただきました。今日は本当にありがとうございました。

 

千木良:ありがとうございました、遅くまで。

 

田下:えー、既に午前0時を回っております。電撃ゲームス新装刊の編集が大変だったせいでこんな時間になったって書いちゃいますよ(笑)

 

千木良:それは書いていただいて大丈夫です(笑)

 

 

またTwitterで募集するかも

 

さて、今回、Twitterで募集した質問に対して電撃ゲームス編集長に答えていただきましたが、いかがだったでしょうか。なかなか面白いものになったんじゃないかと思っています。ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。

 

僕はインタビューというのは普段それほどたくさんしてはいないんですが、また、機会があれば@TaoriHiromuにて、質問の募集などしてみたいと思います。その時はぜひ、参加してみてください。それでは!

 

追記

 

さて、ここで問題です。本文中の電撃ゲームス編集長に対する質問はいくつあったでしょう? 答え、9問。 orz 10の質問のつもりが「質問9」がぬけてて、9の質問になってました・・・大変失礼いたしました。ご愛嬌ということで、どうかお許しくださいませ。