2009年

10月

19日

ゲーム発売後も、ゲームをさらに面白くし続けた公式サイトの話

 

一見地味なWebサイトが、ゲームを面白くした

 

ニンテンドーDSに、カルドセプトDSというゲームがあります。発売されたのは1年前の2008年10月。で、今日は、そのカルドセプトDSのWebサイトのお話です。

 

公式サイトにあたる「カルドセプト DS スペシャルサイト」なんですが、一見普通の、というか若干地味目のこのWebサイト。でも、このWebサイトが、1度発売されたゲームを、さらに面白くする為に機能しているんです。

 

なんで今頃になって、1年も前に発売されたゲームのWebサイトの話をするかというと、つい最近、このカルドセプトシリーズをずっと手がけているプロデューサーの武重 康平さんという方に、実際にお会いしてお話を伺う機会があったんです。で、そこで色々と聞くとですね、やっぱりよくよく考えられているんです。それは、その考え方は、根っこのところでカルドセプト以外のあらゆるゲームに通用するような、大切なものに思えたんですね。それで、 Webサイトのお話のところを僕のサイトでご紹介してもいいですか、とおたずねしたら、いいですよ、というお返事がいただけました。

 

このサイトのことを知ると、ゲームソフトのWebサイトの有り方について、サービスというものの有り方について、ちょっと考えさせられます。

 

カルドセプトってどんなゲーム?

 

Webサイトのご紹介をする前に、ちょっと色々回り道をしてご説明することがあります。お付き合いください。まずはゲームの説明です。

 

カルドセプトDSが発売された頃、実は僕はAllAboutで「セプターを増やす為のカルドセプト講座」という紹介記事を書いています。詳しく知りたい人は、この記事を読んでいただくとなんとなく分かっていただけるかと思います。

 

で、読むのがメンドウな人の為に、簡単に説明すると、カルドセプトというゲームはマジック・ザ・ギャザリングや、遊戯王のようなカードゲームと、モノポリーやいただきストリートのようなボードゲームが融合しているゲームです。

 

この話で特に大切なのはカードゲームの部分。この種のカードゲームというものは、カードの束があって、それをシャッフルして、自分の番になるとその1枚めくって、そのカードの効果でゲームを有利進めます。カードは、モンスターのカードがあって戦わせることができたり、武器のカードがあってそのモンスターに装備させて強化したり、カルドセプトはボードゲームでもあるのでサイコロの目を操作するようなカードもあります。

 

そして、カードゲームで1番重要なことは、そのカードの束です。カルドセプトではプレイヤーが引くカードの束をブックと言いますが、それぞれのプレイヤー同じブックからカードを引きません。それぞれ、自分が作ったブックを所持し、自分のカードは自分のブックから引くんです。

 

ですから、あらかじめ何のカードを何枚ブックに入れておくかというところがゲームの勝敗を大きく左右します。どんなブックでどう戦うという、ゲームが始まる前の戦略が大変に大きなウェイトを占めるんです。ここのところをまずは覚えておいてください。

 

ブックに地方性が出る時代

 

もう少し、回り道をします。まだ今のようにオンラインなんかが一般的ではなかった頃のお話です。カルドセプトはまず最初にセガ・サターンで発売され、武重さんはその発売後にスタッフに加わることになります。

 

その後、PlayStation版が発売されるのですが、この頃は今のようにオンライン対戦の環境なんてありませんから、地方を回って、現地で集客をして、カルドセプト大会を開く、というような販促活動をしていたそうです。

 

で、そこで面白い現象が起きていたといいます。というのは、地方によって使うカード、先ほど説明したブックに入っているカードに、偏りがあったんだそうです。今よりも情報の伝達がスムーズでないですから、攻略の情報も場所によって差があり、ブックに地方色がでていたと言うんです。もしかしたら風土の持つ気性というのも、反映されていたかもしれませんね。

 

時間がブックを変化させる時代

 

今度、それがドリームキャストで発売される頃になると、情報伝達に変革が起きます。インターネットですね。ドリームキャストもモデムを搭載してインターネットに標準で接続できるゲームハードでした。カルドセプトにもオンライン対戦がついたんです。

 

そうすると、見事に地方色というものは消え去ったそうです。距離による情報伝達の差というものが埋まったわけです。その代わり、今度は時間によってブックに流行がでるようになったと言います。

 

つまり、インターネットで攻略情報が共有されるので、みんなでどんどんゲームの仕組みを解析していって、その進捗によって全体のプレイヤーがブックに入れるカードが変わっていったんですね。

 

Webサイトがゲームをダイナミックに動かす

 

いよいよ、カルドセプトDSです。カルドセプトDSはニンテンドーWi-Fiコネクションによってオンライン対戦をすることができます。ご存知の人もいるかもしれませんが、ニンテンドーWi-Fiコネクションというのは任天堂が提供する無料のマッチングシステムで、無料故に、あまり複雑な機能がありません。でも、武重さん達は、これまでの経験から、どうすればオンライン対戦が面白くなるかを考えました。

 

重要なのは、情報です。

 

そうして考えられた施策の1つが、サーバーのログ集計することでした。それも、プレイヤーが使ったカードのログです。ただログを取るだけなら、Wi-Fiコネクションのサーバーでも問題なく可能です。

 

さあ、やっとWebサイトの話になりますよ。そのログの集計結果、どのカードがどのくらい使われているかというカード使用率ランキングを公式Webサイトにアップしたんです。それが、こちらです。

 

パッと見は何の変哲もない1ページですが、これがゲームプレイに変化を起こします。どのカードがたくさん使われているかという情報が流れるということは、そのカードの対策が取られるということと等しい意味があるからです。

 

この情報を知ったプレイヤーが対策を考え、その結果使われるカードに変化が生まれ、そして硬直しそうになっていたゲームの展開がまた大きく動き出す、それを今までの経験から武重さん達は予想していたんです。予想して、ゲームがよりダイナミックにいろんな変化を起こす仕組みを仕込んでいたんです。

 

ゲームは1度販売してしまえば、手を加えることはできません。しかし、武重さん達は、Webサイトに情報を出しただけで、ゲームを出した後も、ゲームを面白くすることに成功していたんです。

 

本当のサービス

 

創意工夫というものは、こういうことを言うんだろうなあと思います。お金をたくさんかけられない、Wi-Fiコネクションで使えるサーバーの機能には限界がある、DSというハードにも制約はある、できない理由は山ほどあるはずです。でも、カルドセプトDSでは、ご紹介したランキングだけでなく、ありとあらゆる工夫がなされ、本当に長く楽しめるオンラインサービスが実現されています。

 

ゲームを売った後も、ゲームを面白くする、これこそ本当のサービスかもしれません。

追記。

 

僕がお話を聞いたのが、プロデューサーの武重さんだったので、このお話は「武重さん達」という形でご紹介していますが、その武重さんから、このゲームは(開発メーカーの)大宮ソフトの作品で、紹介したような長く遊べる仕組みは現場の方々の努力の賜物である、とのメールをいただきました。

 

現場でゲームを制作する方々が、精魂こめて作品を作り、情報収集に励んだこと。発売1週間で売上げの8割をたたき出すコンシューマーゲーム業界においても半年先、1年先のサービスを考えるユーザーへの愛と覚悟を持っていたこと。それらによって、このようなサービスが実現している、とのお話でした。

 

カルドセプトに関わる皆さんの努力によって、このようなサービスが実現していることを、追記しておきます。