2009年

9月

29日

「ラブプラスが彼女を怒らせる構造」の続き

ラブプラスというゲームがインターネット上で大変話題になっております。僕も「ラブプラスが彼女を怒らせる構造」という記事をAllAboutというWebメディアで書いたんですが、これにかなりたくさんのアクセスをいただくことができました。AllAboutのデイリーランキングでは、UPした日から4日続けて1位でした。400以上のガイドサイトでライターさん達がしのぎを削っておりますので、4日連続は結構凄い感じです。

 

ラブプラスがどういうゲームであるかについては、AllAboutの記事をご覧いただきまして、今日はそこで書ききれなかったお話を少ししたいと思います。

AllAbotの記事では、最後に、ラブプラスを「面白いゲームじゃなくて、幸せなゲーム」とご紹介しました。女の子と恋人になる為にゲームを攻略するのが面白いゲームではなくて、恋人になった後、毎日彼女とイチャイチャするのが幸せなゲームだ、という内容です。で、この「幸せ」というのはこのゲームの今後の売れ方にもしかすると大きく影響するかもしれない、というのが今日お話したいことです。

 

「幸せ」という継続的な価値

 

ラブプラスは「幸せ」なゲームだとお話したんですが、この幸せというのは商品を売る時には凄く強力な性質の価値を持っています。というのは、「幸せ」っていうのは継続的な価値なんです。ゲームをクリアする、女の子を攻略するという時の価値は、「達成感」なんて表現できると思いますが、「達成感」というのは瞬間的な価値です。その瞬間には凄く大きな快感があるので、その瞬間の為にゲームを遊ぶ人は少なくありません。ただし、達成した瞬間を迎えてしまったらそれでオシマイです。

 

「幸せ」というのはそういうものではありません。「幸せ」というのは長く続く状態です。今日も幸せ、明日も幸せ、毎日幸せなんです。ラブプラスでいうと、今日も朝一緒に登校して、おしゃべりして幸せ。明日も、学校帰りに手を繋いで幸せ。お休みの日はデートしてキスして幸せ。朝起きてメールして、夕方ちょっと呼び出して、夜寝る前にまたメールして、やっぱりちょっと幸せ。

 

幸せである間は、ゲームしますよね。なんだか遊んでるうちに、寧々さんがうっとおしくなったり、現実の彼女が怒り出したりして、幸せでなくなったらゲームもしなくなると思いますが、幸せでいる間はゲームを続けるはずです。

 

「幸せ」という価値が強力な理由

 

この「幸せ」という価値は継続的なものだという話は、1年間のカレンダーにそってイベントが起こる内蔵時計連動型コンテンツがあるから長く遊べる、ということとは似ているようで違います。

 

よくマーケティングデータが云々という人の中に、こういう売れたものの機能と、売れた数字を結びつけて話す人がいるんですが、多くの場合正確じゃありません。

 

商品の価値をいくつかの段階に分解して説明してみましょう。商品は、まず機能があります。売るためには、その機能が何の用途に使えるのか提案する必要があります。そして、お客さんが購入するのは、さらにその先にある価値を感じ取れるかで決定します。分かりやすくする為に車を例に出します。家族で乗れるワンボックスカーがあったとしますね。それを分解すると、

 

車内が広いワンボックスカー(機能)


家族でみんなで旅行。荷物も余裕で入ります。(用途)

休日が楽しかった!(価値)

 

という流れになります。で、大事なのは、「休日が楽しかった」ということですね。この車を使って家族みんなが楽しく過ごせると思うから買うわけです。そういうことが分かっているんで、車のCMでは家族で旅行に行って、楽しそうに大はしゃぎ、みたいな場面がよく出てきたりします。

 

ゲームハードがスペックだけでは売れず、それを生かせるソフトが必要だというのは、機能だけでは駄目で、用途が必要だよ、という話ですね。任天堂がしつこいぐらいにゲームを楽しそうに遊ぶ場面のCMを流すのは、そこからさらに踏み込んで価値の部分を演出していくためです。

 

この流れをラブプラスにおきかえるとですね、

 

内蔵時計連動型コンテンツ(機能)


1年を通して彼女とイチャイチャしながらすごせる(用途)


幸せ(価値)

 

と、なります。

 

だから、多分、ラブプラスをやっても幸せにならない人は、あっさりゲームに飽きてやめてしまったり、お店に売ってしまったりすると思います。いくらリアルタイムでゲームが進んだとしてもです。ちなみに一緒に始めたうちの奥さんは、既にほとんど触っていません。

 

逆に・・・ラブプラスが幸せな人は・・・

 

あなたは幸せを売りますか?

 

そう、売らないかもしれません。これからだってクリスマスがあって、お正月もあって、2月にはなんと言ってもバレンタインデーがあります。DSの内蔵時計を早めればイベントを見ることはできるかもしれませんが、そんなものに意味はありません。機能的に可能だとしても、幸せという価値はくっついてきません。

 

ラブプラスという商品が持っている価値が、幸せという継続的な価値だとすれば、それはやっぱり相当に強力なんです。そしてゲームが長くユーザーに遊ばれる、中古に売られにくいとなれば、これはラブプラスというゲームがロングランをする可能性を示唆します。

 

ロングランする為の高い壁

 

期待をこめて、ロングランするかも、とお話したわけですが、実際にはかなりハードルが高いと思います。ロングランしない要素もたくさんありますから。そもそもギャルゲーという分野は、やる人とやらない人がはっきり分かれていて、広がりにくいジャンルです。ラブプラスは、かなりディティールに力を入れている分、その傾向はより顕著かもしれません。

 

例えばですね、ラブプラスは長くプレイすると、女の子達がプレイヤーの好みに合わせて変化していきます。髪形や名前の呼び方、服装の趣味や性格まで。で、こういうプレイヤーによって同じゲームでも少しずつ違いが出るというのは、ゲームの口コミ効果を高めることが多いんですが、ラブプラスはちょっと難しい。

 

nintendogsだったらですね、友達にDSを見せた時

 

「見てみてー!」

「うわー!なにこれー!かわいいー!」

 

と、なるかもしれませんが、

これがラブプラスだと


「見てみてー!」

「ぅゎぁ・・・ナニコレ・・・。かわい・・・い?」

 

となるかもしれません。ならないかもしれませんが、なるかもしれないと思ったらなかなか人には見せられません。ここら辺がギャルゲーを広げにくいところでしょう。折角機能があって用途も設定できるけど、価値に届かない例ですね。

 

クリスマス需要やバレンタイン需要があれば、ゲームが変わるかも?

 

ここら辺の高い壁を超えられるとしたら、匿名性の高いインターネットのパワーでしょう。事実、僕の記事もすごくたくさんのアクセスをいただけましたからね。ネット上での話題性は十分。これで、どこまでユーザーの幅を広げられるかは見ものです。

 

もしも、ラブプラスがロングランするようなことがあると、ちょっとゲームの常識が変わります。ギャルゲーという、ロングランして新しい層を開拓するのが難しいゲームであるのに、それが新規顧客を獲得して長く売れ続けるのであれば、かなり注目の出来事です。大量のCMをしたわけじゃないのに、初回発注もそこそこだったのに、ラブプラスがどうしてうまくいったのか、みんな考えますよね。

 

年末商戦の頃。クリスマスに間に合うように買おう、みたいな感じでまだラブプラスが売れ続けていたら、このゲームはちょっとしたインパクトをもたらすかもしれません。

 

【関連記事】

ラブプラスが彼女を怒らせる構造(AllAboutゲーム業界ニュース)