女性手帳は晩産化に拍車をかけそう

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10代の女の子たちに、妊娠するのに適した年齢なんかを教えて、計画的な人生設計を促す「女性手帳(仮)」というものを配り、晩産、晩婚に歯止めをかけたい、という話が話題になっています。どうもかなり、悪い意味で。

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前提として、出産の知識を若い頃から知っておくこと、そのものは良いことだと思います。でも、多くの人が既に散々言ってますが、女性だけに配るのは意味が分かりません。子どもって、女性だけで産むことはできませんからね。そんなの当たり前です。

男女に配らないと意味ないだろう、というのはもうあまりに多くの人が語っているので、いまさら僕が言うまでも無いかと思います。ただ、他にも変だなあと思うところがあって、それがその、そもそも論として、女性手帳は、晩産化に歯止めをかけるどころか、拍車をかけるんじゃないだろうかと思っています。

実は僕、昨年に子どもが生まれまして。奥さんが34歳での初産でした。といわけで、子どもを作ろうかどうしようか、みたいなことを考えていた当事者としての感覚を、ちょっとお話してみたいと思います。


考えれば考える程、産まない人達

なんで30代半ばまで子どもを作らなかったかといえば、子どもをきちんと育てられるか不安だったからです。別に知識がなかったからなんとなく子どもを作らなかったわけじゃありません。むしろ、色んな知識を入れすぎて頭でっかちになってなっていたんじゃないかと思っています。インターネットで本当にたくさんの情報が簡単に手に入る世の中で、僕みたいに頭でっかちで動きが取れなくなっちゃってる人、結構いるんじゃないでしょうか。

ちょっと調べると色んなことが分かります。大学を卒業させるために必要なお金の総額やら、近所の保育園に入れる倍率とか、理想的な子どもの育て方とか。見れば見るほど、こう育てた方がいい、こう育てるべきだ、こう育てなきゃいけない、そういう知識がたまっていって、ハードルが高くなります。

自分の仕事のことも考えます。僕の場合は、ゲームのライターなんかをしていて、自分で自分の仕事をとってこないと収入にならない働き方です。もちろん、安定しません。今年と同じだけ、来年も稼げるかは分かりませんし、5年先なんて検討もつきません。だんだん収入で上がるように頭を捻って日々動くわけですけど、考えた通りにいくわけじゃありません。

 

僕はちょっと特殊な働き方してますが、サラリーマンの人だって、この先順調に給料は上がるだろうし、会社が倒産することなんてありえないし、リストラもないだろうと、そこまで楽観的に思っている人は、そんなに多くないんじゃないかと思います。

 

そして、考えれば考える程踏ん切りがつかなくなります。基本的には結論の先延ばしです。これ以上考えていると奥さんの身体的なところで子どもを産むのが難しくなっていくかもしれないという30代半ばで、決心して子どもを作ったんです。

決して景気も良くない世の中で、人生設計をまじめに考え、生まれてくる子を間違いなく幸せに育てたい、なんて思えば思うほど、中々子どもを作るという結論を出すことができなくなります。


生まれてしまえば、必死に育てる

一方で、僕なんかよりもずっと早く子どもを産んだ大学の後輩がいます。彼女は大学生の頃にいわゆるできちゃった結婚で子どもを産んで、大学を中退、その後旦那さんとは離婚して1人で子育てをしています。仕事は派遣、住んでる場所は東京で、両親は長野に住んでいます。

さっきみたいに子どもを幸せにするために必要だと思うことを頭で考えて積み上げていったら絶対にあり得ない選択です。実際、彼女は思慮深いと言えるタイプではないかもしれません。でも、子どもはスクスクと、元気に育っています。

たまに会う機会がありますが、女性1人で、しかも大学を卒業する前に母親になって、ここまで立派に育て上げるってすごいなと、本当に感心します。でも、そんな苦労はほとんど感じさせず、親子で楽しそうにしています。僕が主催したゲームイベントに来てくれたこともありました。

僕が子どもをどうしようかと思っている時に、周りの既に子どもを持っている人達の助言はほとんど同じで、「生まれてしまえば、育てるよ」ということでした。その頃も、なんとなくそうなんだろうなと思っていましたが、生まれてみて、たまにまだ子どもを作ってない友人に聞かれると、同じ事を言っています。そりゃ大変なことは山のようにありますが、生まれてしまえば、必死に育てるのです。


昔よりずっと楽になった

そしてわりと、なんとかなります。そりゃそうです。僕が産まれた頃よりも、世の中全体がずっと豊かに、便利になっているんですから。哺乳瓶の消毒1つとったって、煮沸だったのが、レンジでチンになってるんです。些細なことに思えるかもしれませんけど、毎回煮沸だったらと思うと、大変すぎてちょっとクラッとします。

紙おむつなんて超優秀でいっくらおしっこしたってグングン吸収します。高吸収性ポリマーってスゴイ。あんまり快適すぎておしっこしても赤ちゃんが泣かないので、おしっこしたら青いラインで教えてくれるのです。

昔は布おむつだったんですよね。布なんておしっこしたら簡単に貫通するからその上から防水性のカバーをさらにはかせていて、当然気持ち悪いのでおしっこしたらすぐに赤ちゃんが泣いて、大量のオムツを洗濯しまくって毎日干すんです。

紙オムツやミルクの買い物だって、自分でいかなくてもネットスーパーに注文したら次の日届きます。育てていて、なんか不便だな、こんなのあったらいいなと思うものは、インターネットで調べれば大概思っていたようなものが既にあって、Amazonで検索すると一瞬で見つかりますから、後はポチッとするだけでやっぱり次の日か翌々日には届きます。

今日も1つ買いました。そろそろ赤ちゃんが1人で寝てくれるから、寝ている間に大人は別の部屋でご飯食べたり、仕事したり、家事したりしたいなと思いまして。でも、目が届かないのはちょっと不安だったんですね。探したら、ベビーモニターというのがすぐに見つかりました。赤ちゃんの様子が離れた場所から音と映像でモニタリングできて、遠隔操作でカメラの角度を変えられ、赤外線で暗くても様子を見ることができるそうです。レビューを見たら評判の良いコメントがたくさんついていたので買ってみました。明後日届きます。イエーイ便利。

色んな知識を入れて、子どものためにはこうした方がいい、こうしなきゃいけないというのを詰め込みすぎるから難しくなるわけで、自分が育てられたのとおんなじくらいのことがしてあげられればいいと思えば、どうとでもなるものです。何しろ、世の中圧倒的に便利になっています。


失敗しないように人生設計すればするほど、子どもを簡単には産めなくなる

で、女性手帳に話を戻します。若い子に出産の仕組みを教えることはとても良いことだと思います。もちろん、男性にも教えなきゃいけませんよ。むしろ、男性の方にしっかり教えるんです、知らないことが多いはずですから。でも、それによってマジメに人生設計をしましょうと言えば、おそらく晩産化は加速していくでしょう。

マジメに人生設計すればするほど、出産以外の選択肢がたくさんあることに気がつき、子どもがいることによって自分が背負わなければいけないリスクが明確になり、簡単には出産できなくなります。最終的には、医学的に産むのが難しくなっていくラインの35歳あたりに近付いていくんじゃないでしょうか。


案ずるより産むが易し

日本には「案ずるより産むが易し」ということわざがありまして、出産、育児というのは、まさにその通りなんじゃないかと思います。無責任に聞こえてしまうかもしれませんが、子どもを作る時は勢いって大事ですよ。どうなるか分からないけど、えいやって。最後はそれしかないです。だって育てたことないんですから、結局考えても分かりゃしません。

子どもをもっと産んで欲しいのであれば、赤ちゃんのかわいさと、子育ての楽しさでも教えた方がまだマシなんじゃないかと思います。

赤ちゃん生まれると、本当に景色が変わりますよ。もう1度、人生の楽しかったことを全て最初から子どもと一緒にやってみよう、そんな気持ちになりました。春はひな祭りやってお花見して、夏は七夕に花火に海水浴、秋になったら運動会に山登りや芋掘りもいいですね、冬はクリスマスに大晦日にお正月、家族でこたつ囲んでボードゲーム。もちろんあちこちに旅行したいし、動物園や水族館、博物館に美術館、アスレチックとかも楽しかったなあ、なんて。

楽しかったことは全部子どもにしてあげたいし、自分も、子どもと、奥さんと一緒にもう1回楽しみたい、そんな風に思ったら、本当に毎日ワクワクします。

でも、生まれるまでそんなこと思いつきもしませんでした。それよりも、仕事がどうなるんだろう、お金は大丈夫だろうか、時間が足りなくなるかも、そんなんばっかりです。大事なことなんですけど、分かんないこと考えすぎても、結論が先延ばしになるだけなのです。

若い子に出産の仕組みを教えることはいいことですが、それによって計画的な人生設計をさせても、晩産化は加速するばかりだと思います。それよりは、そんなに難しいことを考えなくても、周りのみんなで協力して育てたらなんとかなるよ、世の中便利になってるし、子育て楽しいよと、そういうおおらかな話を伝えた方がいいんじゃないかなあと、そう思います。

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