良ゲーと、情報表示デザインの関係

このエントリーをはてなブックマークに追加

例えば体力バーとか、セリフを表示するエリアとか、スコアとか、そういうゲームに必要な情報表示のデザインの話です。

PSVitaで朧村正をプレイしていたんですよ。遊んだことがある方は分かると思いますが、それはもうため息が出るぐらいグラフィックの美しいゲームです。そういう話をすると、例えば背景の美しさであったりとか、キャラクターの動きであったりとか、ボスのデザインであったりとかっていう話が多いんですが、情報表示系もセンスが良いなあと思うんです。


気がつかないぐらいに、良いデザイン

情報表示系のデザインでセンスがいいというのは、必ずしもすごく美しいとか、豪華であるとか、そういう話じゃないと思うんですね。そのゲームの世界観を反映していて、違和感の無いデザイン、伝えるべき情報はひと目でわかり、なおかつ画面の中に溶け込んでいるというものが最上だろうと思います。

そういう意味では朧村正の情報表示は、筆で描いたようなシンプルなマップとか、ロウソクで表現された残り体力とか、小さいけどしっかり描かれたアイテムのアイコンとか、こだわりの感じられる和風フォントとか、どれも適格で、しかもそれらがゲーム中に余計な主張をせず、結果、美しい背景や、キャラクターの細やかな動きにユーザーはウットリすることができるのです。

これが、フォント1つとってもいい加減だったりすると、安っぽいバラエティ番組のテロップみたいになって、一発で全体をチープにしてしまうことさえあります。


情報表示にセンスが感じられるゲームは、良ゲーが多い気がする

朧村正のように情報表示にまでこだわりが感じられるゲームというのは、ゲーム全体についてもしっかり作りこまれたものが多いような気がします。そんなことをゲーム開発職の知り合いにぶつけてみたら、中々面白い答えが返ってきました。あくまで、彼の見方ですから、どこまで一般化できるかは分かりませんが、参考にはなると思ったので、書いておきます。

 

 

1、線一本にも世界観を反映できるデザイン力

 

彼いわく、多くの場合、ゲームの情報表示はどういうものかある程度型がきまっているので、経験値のあるデザイナーだと、それっぽく作れることが多いそうです。

 

このそれっぽく作れてしまうというのが曲者で、それっぽく作れてしまうが故に、ゲームの世界観がガッチリ決まってなくても進行できてしまう、そういう意味で、世界観の作りこみの甘さが出やすい部分かもしれない、と教えてくれました。

じゃあそれっぽくじゃなくて、ゲームの世界観をしっかり反映させたもの、ピッタリあうものを作ろうと考えると、今度は難易度がグンとあがります。キャラクターとか、背景とかじゃない、ただの線とか色面とか、文字の集まりであることが多い情報表示のデザインで、どうやって世界観を表現するかというのは、相当しっかりイメージが固まってないと難しいということなんですね。

 


2、情報表示の重要性を高く評価できる環境

2つ目の視点として、ゲーム画面の中で、売れるために力を入れている部分と、ゲームの完成度を上げる為に力を入れている部分が(明確に分かれているわけではないが)存在し、情報表示はゲームの完成度を上げる為に力を注ぐ部分である、という観点もあるそうです。

例えば雑誌に掲載されるスクリーンショットとか、Webで公開するプロモーションビデオはどこのメーカーでも力を入れます。その中でも、プレイヤーキャラクターであるとか、ボスキャラのデザインなんかは、当然インパクトがあって見栄えがするものを、とみんな考えますよね。それはゲームをよりたくさん売れるようにする為です。

それが行き過ぎると、スクリーンショットは何か良い感じなのに、実際にプレイしてみるとイマイチ、なんてゲームもあったりします。

逆に、情報表示のような、それ程注目されない細かなところをキッチリ作るというのは、必ずしも広告宣伝のためではなくて、ゲームの完成度を高めるということを、しっかり考えているのかもしれない、ということでした。

 

 

3、情報表示にまでこだわれる組織

3つ目。さらにいうなら、そもそも、情報表示にこだわることが可能である、という時点で、その開発チームは相当のポテンシャルを持っているはずだ、とも彼は言います。

 

先ほど広告宣伝の話をちょっとしましたが、それと同様に、グラフィックチームの花形は、やっぱりプレイヤーキャラクターだし、その次はボスキャラかもしれませんし、ゲームによっては背景かもしれません。いずれにしろ情報表示はそれ程目立つところではありません。

ですから、例えば、人を育てるという時に、優秀なグラフィッカーを、キャラクターデザインができるようにとか、背景ができるようにとか、そういう目線で育てることが多くなります。あるいは外から優秀な人を取ってくる場合においても、似たようなことが言えるでしょう。

 

一方で情報表示に関してはどうかというと、出来る人がやる、というような現場も少なく無いとか。背景班だけど、情報表示も兼任、みたいな。

 

情報表示系も、しっかり作りこみたいと考えても、それが出来る人がいるとは限らないんですね。ゲームの完成度を高めるために情報表示のデザインにこだわろうと考え、なおかつ、それができるチームを維持している開発は、やっぱりある程度余裕があるところだし、地力があるところなんじゃないかな、と彼は話しました。

 

 

丁寧に作られた良いゲームを探す手がかりになるかも

もちろんこの話は、情報表示が作りこまれているゲームは絶対面白いはずだ、と強く言い切れる程の根拠にはならないと思います。最初のほうで申し上げた通り、1人の開発者さんの見方であって、どこまで一般化できるかは分かりません。それでも、このゲーム丁寧に作られてるんじゃないか、ぐらいの手がかりにはなりそうです。

このゲームどうかなー、買おうか、やめようか、最後に背中をひと押しして欲しいなあ、ぐらいの時に、情報表示のデザインにセンスを感じるか、丁寧な仕事がされているか、チェックしてみてもいいんじゃないでしょうか。

毎週金曜夜19:00より、ワイプ代々木北口駅前店にて、みんなでゲームを持ち寄って遊べるゲームサロン的場所「代々木ゲームルーム」やってます。5月11日(土)13:00より「ゲームルーム1周年記念イベント」開催! 詳しくはこちら