ちきりんさんは結局「強みを活かそう」と言ってないか?

ちきりんさんという有名なブロガーの方がいらっしゃいますが、その方の「自分の強みを活かすというアホらしい発想」というのを読みました。とても共感できる文章なんですが、1つだけひっかかるところがあります。これ結局、強みを活かそうと言ってないでしょうか?

 

【関連サイト】

自分の強みを活かすというアホらしい発想(Chikirinの日記)

 

詳しくは元記事を読んでいただきたいんですが、何か「自分の強み」というものが極めて狭い範囲で語られているために、強みを活かすのはアホらしいという話になっているんですが、どうも「強み」の定義に納得がいかないのです。そしてそれ以外は、大変にうんうん、なるほどなるほどと、共感できます。


というわけで「自分の強みを活かす」ってどういうことなのか、僕が普段考えていることを少しお話してみたいと思います。別にこれ、ちきりんさんに反論したいんじゃなくて、多分似たようなことを言ってるんですけど、捉え方が違う、みたいな話かと思います。


それから、今回別にゲーム業界の話じゃないんですけど、僕がゲームライターなので、ゲーム成分多めなのはご勘弁を。

 

 

自分の能力と社会との接点を考える

 

ちきりんさんは、自分の強みを活かすというのは、供給者の視点であって、消費者の視点が抜けていると書かれていました。つまり、我が社の高い技術を活かした商品です、ドドーン、と出しても、消費者側がそんなのイラナイってなったらどうしようもないよね、ということ。確かにそうだと思います。なんかすごくゲーム業界でありそうな話です。髪の毛の一本一本まで精細に描いた→それって面白いの? みたいな。

 

でもそれは、自分の強みを活かしたとは言えないんじゃなかろうか、というのが僕の意見です。自分の強みの押し売りとでも言いましょうか、社会の中で活きていないんだから、活かしたとは言えないでしょう、と。


僕がよく言うのは、自分の能力と、社会との接点を考えよう、ということです。もう少し砕いて言うと、自分のできることと、誰かがやって欲しいことが重なっている何かを探す、これがうまくいくと「自分の強み」を「活かした」と言えるんじゃないでしょうか。

 


「やってて楽しい」は強みじゃないだろうか

 

ちきりんさんは、「やればできること」よりも「やってて楽しいこと」に時間を使うべきだとおっしゃっています。僕も全くその通りだと思うんですが、しかし、「やってて楽しい」というのは、強みにカウントされないんでしょうか?

 

僕はゲームライターなわけですが、当たり前にゲームが大好きです。移動時間は全部ゲームですし、トイレに入ったらスマホでゲームアプリしてますし、お盆も正月もゲームしてます。どんなに忙しくても1日最低3~4時間は遊んでますし、時間が余れば余っただけゲームしてます。

 

ニコニコ生放送で風来のシレンを24時間遊んでクリアする、みたいな企画もやってますが、辛いとは感じていません。もちろん、ゲームをたくさん遊んでいるだけじゃゲームライターの仕事はできないんですが、前提として無限にゲームを遊び続けられる人じゃないとできない仕事でもあります。

 

【関連サイト】

みんなの力で24時間以内に『風来のシレン4 plus』99階制覇を目指す実況(ニコニコ動画)

 

僕の記事なんか読む人はゲーム好きな人が多いでしょうから、なんだそれくらい、と思うかもしれませんが、ゲームが好きじゃない人が同じ仕事をやろうと思ったら苦行どころの騒ぎじゃありません。とても続かないでしょう。


しかもです、これがさらに、ゲームに関わらなきゃいけないんだけど、ゲームはそれ程遊んでいない、というところに行くと、さらに強みとして活きてきます。例えば、ゲームと何の関係も無い新聞とか雑誌、テレビなんかのメディアでお話をするとか、ゲームショップチェーン本部の偉い年配の方に解説するとか。結局、能力を必要とするところに持っていけば、強みとして活かされる、ということだと思うのです。

 


「周りを使える」は強みじゃないだろうか

 

元記事では、自分の強みなんか活かさなくていいという話の中で、自分の強みにこだわらないで、周りを上手く使って提供すればいいのであって、外部の人間を雇ってでも提供するというぐらいじゃないと生き残れないとも書かれていました。

 

確かにそうです、自分の得意分野にこだわらず、色んな方法で必要とされるものを提供していくべきでしょう。ただ、周りと連携して、外部の人間を雇って、というのは、誰もが自由自在にできることではありません。


今、日本のコンシューマーゲーム市場で最も勢いがあるのはニンテンドー3DSですが、その要因の1つにカプコンのモンスターハンターシリーズ本編が供給されているという点があります(もちろんそれだけじゃありませんよ、あくまで要因の1つ)。そうか、全部のヒット作を任天堂が自分で作らなくても苦手なジャンルはサードパーティーの強いコンテンツを持ってきちゃえばいんだって、そういう話ではあるんですが、PSPで育った携帯ゲームハードにおけるモンスターハンターシリーズを引っこ抜ける、これ自体がすごいんですよね。それって任天堂の荒業だよね、という話でもあります。


マイクロソフトが日本のゲーム市場において参入以来ずっと苦戦してます。日本で売れるゲームコンテンツをどんどん引っこ抜いてくればいいのに、というのは誰でも思いつきますが、そうカンタンにはいかないというのは結果が物語っています。あの、マイクロソフトでさえもです。もちろん、外部の優秀な人材だってたくさん雇ってますよ、でも、だからといってそれが上手く機能するかというと、別の話なのです。


自分で作ろうが、他所から持ってこようが、お客さんが欲しい商品を並べたところが強いというのはまったくもってその通りなんですが、他所から持ってきて、それをうまく使えるというのは、誰でもできることではありません。もしできるのであれば、それは間違いなく「強み」と言えるでしょう。

 


商売は、あるところから、ないところへ


結局のところ、ちきりんさんが言う「強みを活かす」は、強みを活かしているとは言えませんし、逆に、強みなんか活かさなくたってこうやった方がいいじゃないか、と言っているところは「強みを活かす」例になっているんじゃないかと思ったんですね。なので、大筋は共感できるんですが、どうしてもひっかかってしまいました。


おそらくこれは「強みを活かす」という言葉が、「自分が強みだと勘違いしている部分を消費者に押し付ける」という意味に使われているせいではないかと思う次第です。自分が得意だと思っていることを相手に押しつけるだけでは、強みを活かしたとは言えないですよね。


僕が考える商売の基本は「あるところから、ないところへ」です。

 

何かしらの強みが自分にあって、それが必要なのに足らないところへ持って行くと活きますよね、それが「強みを活かす」ということじゃないでしょうか。

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